民生児童委員インタビュー

民生児童委員の想いをお伝えします。

第6回福祉の道に導かれ、新しい時代を仲間とともに

貫名 通生

東京都民生児童委員連合会 副会長
新宿区民生委員・児童委員協議会 会長

福祉の道に導かれて

平成4年の一斉改選で委嘱されたので、今年で27年目になります。実は、その3年前(平成元年)の改選時にも町会長から依頼されたのですが、事情があり、断ってしまいました。さすがに二度目は断れませんでしたね。

当時は40代前半でしたが、先輩から「福祉の『福』という字は、神様にお神酒を捧げる徳利を表し、『祉』は神様がそこに足を止めることを表している。つまり、神様に足を止めてもらい、この場所にいる人々のことを伝え、幸福を祈るという意味から「福祉」という言葉が生まれた」と、言葉の成り立ちが宗教的な意味を持つことを教えてもらいました。そして、「だからこそ、住職であるあなたが福祉の最前線に立つ民生児童委員をやるべきだ」とも。

四谷地区にはお寺が多く、昭和28年の新宿区社協設立の際は、民生児童委員や町会役員として活動していた住職の先輩たちが尽力されたそうです。それを知り、私も福祉に携わることを自然なことだと考えていたから、引き受けたように思います。最初は自分から進んでなったわけではありませんでしたが、気が付くと人生の半分近くを委員として過ごしてきました。

就任直後の自分の地区は、民生児童委員に対する風当たりが強い時期で、住民の方々になかなか理解されなかったこともあります。現在はそんなことはありませんよ。委員一人ひとりが真摯な活動を積み重ねてきたことで、住民に受け入れてもらうことができ、信頼を得られたのだと感じています。

応援してくれる仲間とともに

1期目の時から、「委員として、もっと活動するべきではないか」と思っていました。2期目からは、民児協でその意見を伝えるようにしました。当然、自分とは考えの異なる方と議論になることもありましたが、だんだん私を応援してくれる人も増えてきて、民児協全体で積極的に活動をする機運が徐々に高まってきました。

活動が発展しない要因の一つとして考えられたのが、会長の任期が3年一期と地区民児協の規約で決まっていることでした。そこで、応援してくれる仲間が、必要に応じて任期延長ができるように規約を変更し、私を会長に推してくれました。この改正で、継続性のある、将来を見据えた組織運営ができるようになったと思います。

当時の私は、新宿区の民児協内で一番年下でしたが、先輩達から支えてもらったおかげで、会長職ができていたと思います。

代表会長になってからは、民児協の会計や会議の進め方などを変革し、より良い組織となるよう、努めてきました。また、都民連や東京都の会議に出る時は、現場の意見や改善してほしいことをできるだけ正しく伝えることを使命と考えていました。現場の委員が活動を行いやすく、その内容を充実させることが、住民の利益につながるからです。

また、民児協運営は、「みんなで一緒につくる」という点を大切にしているので、私の役割は、「長」や「リーダー」というより、「調整役」という方がしっくりくるような気がしますね。

最大の強みは住民としての視点

住職という仕事を通して、人の最期に関わる機会が多くあります。大往生で見送られる方もいれば、悲しいことに、親族が遺産や相続でトラブルになることもあります。

民生児童委員の活動でも、身寄りのない方から亡くなった後のことを相談されることがありますが、本人の財産を守るため成年後見制度のことをきちんと伝え、必要なら社協に相談に行くよう勧めたりしています。「本人のために動く」をモットーにしているんです。

民生児童委員は、担当地区の妊産婦から高齢者まで、すべての住民が対象で、困っている人を見つけてお話を聴いたり、関係機関につなげる、架け橋の役を担います。

同じ地域に住み、人や環境をよく知っていることは、私たちの最大の強みではないでしょうか。こうした強みがあることで、一人ひとりに合った対応ができ、また情報を提供できるのだと思います。例えば、認知症の住民が道に迷っていたら、どのように声を掛ければよいか、どこに行こうとしているか、などが自然と思い浮かびますよ。

活動に魅力を感じるのは、やはり相手から思いがけず感謝される時です。

担当地区の住民については、同じ地域で暮らしているだけに行政や関係機関が知らない情報を得ていることもあるので、支援が必要な時は、委員から関係機関に情報提供する場合もあります。それだけの役割を期待されていることは、やりがいにつながると思います。そのためには、積極的に地域に出て活動し、住民に自分の顔を知ってもらうことも大切ですね。

地域の変化と新しい時代を担う仲間として

昔は、相談者が役所の窓口でたらい回しにされることが多く、委員として意見したこともあります。今はさまざまな支援機関のネットワークができ、専門機関がきめ細かく支えてくれるので、安心感があります。だから、私たちはつなぎ役として活動することが以前よりも多くなりました。

委員として活動した27年間で、新宿区も変わりました。外国籍の住民が多くなり、それに関連した相談を受けることもあります。区では「多文化共生」を目指しており、民生児童委員が果たす役割も大きいと思います。例えば、四か国語に対応した子育て支援パンフレットを民生児童委員の自主事業として配布しています。

新任委員や候補者の方には、「まずはやってみよう」と言いたいですね。さまざまな人に出会うことができますが、中には大変な状況の方もおり、どう対応して良いか悩んでしまうこともあるかもしれません。そんな時は、いつでも仲間に相談してください。新宿区では、「一人で悩まない」ことを大切にしているので、地区体制という、7名程度のグループになってお互いの活動を助け合う実践をしています。

初めは自ら進んで委員になったわけではなくても、活動を続けているうちに「民生児童委員をやって良かった」と思ってくれる人はたくさんいます。そういった人たちは、きっと先輩として新任委員を支えてくれるでしょう。ぜひ、私たちの仲間になって、一緒に活動しましょう。

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新宿区・新宿区民児協共催「民生委員制度創設100周年記念式典」
で仲間と(貫名会長は左から5人目)

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