民生児童委員インタビュー

民生児童委員の想いをお伝えします。

第1回人を見つめ、暮らしに寄り添い、まちをつくる

寺田 晃弘

東京都民生児童委員連合会会長
豊島区民生児童委員協議会会長

父親のアドバイスで始めた地域活動

昭和60年、それまで勤めていた会社を辞めて、豊島区の実家で建築事務所を設立することにしました。その時、民生児童委員を務めていた父親から、地元で商売するなら「まち」に貢献した方が良いとのアドバイスを受けて地域活動に関わるようになりました。それまでも健全育成の活動には関わってきましたが、思い切ってPTAの役員も引き受け、同世代の親たちと地域の子どもの問題に本格的に取り組み始めました。

そして、民生児童委員の定年を迎えた父親の後を継ぎ、昭和61年に委嘱を受けました。ちょうどその頃は景気が良くて、設計の仕事が次々と舞い込み、目が回るような忙しさでした。ところがバブルがはじけてからは注文が減ってしまって、今度は、従業員を路頭に迷わすわけにはいかないと必死に働きました。

現役で仕事をしていましたので、民生児童委員の委嘱を受けてしばらくは与えられた任務をこなすことで精いっぱいで、管外研修や定例会に出席できないこともありました。民児協の仲間の支えがあったからこそ、今日まで、約30年にわたり活動を続けることができたのだと思います。

人となりを知ること、その人の暮らしに寄り添うこと

建築の仕事で大事なことは、お客さまの話をよく聴き、人となりや暮らしぶりを知ることです。家に住むのは「人」ですから、その方の価値観や生活に合っていなければ、良い家にはなりません。1つとして同じ「家」はないのです。もちろん、お客さまの判断がベストとは思えない時は、アドバイスをします。しかし、どうするか決めるのはお客さまです。このことは、福祉にも通じているように思います。

ある時、ひとり暮らし高齢者のお宅でボヤ騒ぎがありました。隣人の方からご連絡をいただいたので、さっそくお訪ねしてお話を伺ったところ、ゆっくりとした口調で品が良く、凛とした雰囲気がある女性で、大変つつましく生活されおられました。聞けば、一枚の食パンを三等分して、それを朝、昼、晩と分けて召し上がっているとのことでした。足元もおぼつかない様子でしたが、段差の多い家で暮らしていらっしゃって、ガス台の上には換気扇もありません。

民生児童委員として良かれと思い、福祉サービスの利用や住宅改修を勧めましたが、「このままで十分。食事など身の回りのことも、自分でできることは自分でしたい」とのことでした。せめてもの防火対策としてセメント板をガス台の周りに取り付け、それからは毎日、朝の出勤前にお声掛けすることを日課としました。

その方はお風呂が大好きで週2回、公営の高齢者施設にあるお風呂に通っておられました。高齢者施設職員と連絡を取りながら一緒に見守りを続けましたが、半年くらい経ったころ、施設のお風呂を出たところで倒れられ、帰らぬ人となりました。ご親族に連絡し、簡単なご葬儀がなされましたが、今でもその方のことは忘れられません。

最期の日を迎えるまで、自分らしく地域で生きることについて深く学ばせていただきました。

努力はする、けれど努力に差があってもいい

私は、民生児童委員の仕事は、地域に溶け込むことだと思っています。溶け込んでこそ、そこに暮らす住民のニーズをくみ取ることができます。地域にあるさまざまな資源とつながることができます。それは、住民一人ひとりの支援に役立つだけではありません。

くみ取った住民のニーズと地域の資源を生かして、わたしたちが暮らし続けたい「まち」の姿を思い描き、実際に関係機関や地域団体、住民とともにそうした「まち」をつくっていく活動は、とてもやりがいがあります。

一方、私がそうであったように、仕事、子育てや介護など、委員活動に費やすことができる時間は人それぞれです。地域に溶け込む努力を個々の委員がしていくことは欠かせませんが、その努力の中身は違っていいと思っています。あわてず、ゆっくり、無理なく活動を継続していけば、しだいに地域に溶け込み、確かな信頼関係が生まれてくるでしょう。目標を同じくしながら活動差を許容していく姿勢と、仲間同士で支え合う班活動(※)のような仕組みが、私たちの民児協には必要だと思っています。

私は、物事を進める上で「3つの力」が大切だと考えています。状況を正しく見極める「理解力」、これからのことを予見する「想像力」、そして何よりやり遂げるという「気力」です。こうした力を常に意識しながら、息の長い民生児童委員活動を続けていこうと思います。

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